強迫性障害
強迫性障害について
強い衝動に駆られ「それ」を繰り返し、そんな自分に自己嫌悪を抱きそしてまた苦しむ「負の連鎖」である。
強迫性障害とは、自分の意思に反して、不合理な考えやマイナスのイメージが浮かび、それを振り払うために、ある一定の動作を行います。その行動が無意味なものであると感じつつも実行せずにはいられません。心の中では「そんなはずはない」という思いを持ちつつも、「やっぱりそうかもしれない」という気持ちになり、ある種の確認行為などを何度も行い、それにより自分の中にある不安感を鎮めようとします。手が汚れたときなどに「汚いな」と思い洗うことは普通に行われる行為ですが、何度手を洗っても汚いと感じ長時間手洗いに時間を費やしたり、戸締りをきちんとしたか、鍵をかけ忘れていないかを何度も確認してしまったりという行為をします。強迫性障害では、その行動が習慣化し、段々エスカレートしていき、対策を講じなければ日常生活に支障をきたすほどの状態に悪化していきます。
手洗いがやめられない
手が汚れていると思い、長時間手を洗い続けるのもその一つです。そこまで手を洗っても逆効果になるということを頭では分かっていても、不安になってしまいその行為がやめられません。それを儀式的に行うことで安心感を得ています。日本においては、40人に一人の割合でみられる症状です。その発症年齢は若く、中高生~20歳代が多いと言われています。成人の患者さんの30~50%は幼少期から青年期に症状が出始めることが分かっています。
強迫観念とはなにか?
嫌な考えやイメージや思い出などが自分の意思に反して思い浮かんできて、何度も繰り返し感じる考えであり、強い不安感や嫌な思いなどが頭を占拠します。カギをちゃんとかけただろうか?火は消しただろうか?手にばい菌がついたままになっていないか?などが気になって不安になります。そのことに対して、「心配のし過ぎかもしれない」「周りの人から見たら、何でそんなに気にするのだろう?と思われているかも。」など強迫観念から起こす行動に対して、自分でも違和感をもつのですが、その観念が頭を離れることはありません。
強迫行為とはなにか?
強迫行為は、強迫観念から生じる不安や嫌な気持ちなどをなくすために取る行動を指します。無意味な行為である場合が多いです。儀式的に行われます。何度も何度もその行為を繰り返すことで少し不安感が消えます。普通の人であれば、1回で済む行為が、何度も何度も繰り返されます。自分では少しおかしいと思いつつもやめることができない場合が多いです。家の戸締りなども時間をかけて念入りに行います。念入りに行うだけであればいいのですが、それは極端に時間がかかることや何度も気になってしまうこともあります。本人はその行為を繰り返すことで安心しますが、その行為に時間を費やしで時間に遅れたり、出かけられなくなったりすることもあります。無意味であるような行為も多いのですが、本人もやりすぎだなと感じつつもその行為を繰り返してしまいます。
強迫観念からの強迫行為を行うことでより強化される
強迫観念を拭い去るために、強迫行為を行って不安感を静めるという行為は、どんどん強化されていきます。その行為をしなくても不安感を静められることがいいのですが、どうしてもその行為をして、安心感を得るという場合があります。それがだんだんひどくなってくると、物が触れない・外出できないなどの日常的な弊害につながっていくことになります。また家族を巻き込んで、その強迫行為ができないとイライラしたり、家族などに何度も確認をさせたりといった行動に出ることもあります。強迫性障害は不安障害の一種であり神経症の一種です。また、生い立ちや精神的なストレスなども関係していると言われています。浮かんでくる不安をかき消すために、ある一定の行動をとるという図式になっています。それが、許容範囲内であればいいのですが、強迫性障害になると極端になってしまい日常生活にも支障が出ます。家から出られなくなってしまうといったことにもつながります。
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強迫性障害にはどのような特徴があるのでしょうか。強迫性障害の種類についてご紹介します。
潔癖症
電車の中のつり革や誰かと手をつなぐこと、トイレを使うときなどに細菌が気になるからと触れない人たちがいます。また、手にばい菌がついていると何時間も洗って、汚れていないかを確認することや、長時間お風呂に入って念入りに体を洗う人たちなどがいます。頭では一回で十分だという思いもあるのですが、やはり、汚れているのではないかという強迫観念が頭の中をよぎって、必要以上に手を洗ったり、汚いといって公共のものを避けたりするようになります。汚れが、衣服を介して家具や壁、床、部屋全体に広がると思い、トイレに行くたびに服を着替えたり、体を洗ったり、部屋中を掃除したりしないと気が済まない場合があります。また外に出るだけでも汚いと感じてしまい、外出できなくなったりすることもあります。本来であれば、体の免疫機能でそこまで手を洗わなくても、体にばい菌が入ることはないのですが、そのことが理解できずに、心配になって日常生活に弊害が出るほど、潔癖になっている人もいます。
安全確認
家を出るときにカギをかけたかどうか、火の元は確認したか、などが気になって不安になり、何度も家に戻って戸締りや火の元を確認します。自分の行為が完全であったかどうかに絶えず疑問を持って、何度も確かめないと気が済まなくなります。なんどもカギをかけなおして、自分の納得するカギのかちっという音がするまでカギをかけなおすということもあります。カギがかかっているというその事実よりも自分が納得できるかということで何度も確認を行ってしまう場合が多いです。
他傷行為への疑念
車の運転中などに、タイヤに何かが接触した場合に、人を引いてしまったのではないかと、その場所に戻って確認するという行動に出ます。他人を引いてしまうかもしれないという思いから、車に乗れなくなってしまう場合もあります。また、他人を傷つけてしまったのではないかと考えて、テレビや新聞で、事件とされていないかを確認することや、警察や周囲の人に確認する場合もあります。思い過ごしと思われることでも気になって確認してしまうのが特徴です。
順序や数字にこだわる
衣服を着るときには必ず決められた順番で着なくてはいけないと思い込んでいます。靴下は左から履くとか、ズボンを先に履くとか自分の決めた順番で行動しないと不安になります。ゲン担ぎに靴を右から履くと決めている場合などもありますが、強迫性障害の場合にはその行為をしないと不安になってしまいます。その順番がいつもと違っていると、その行為を最初からやり直します。そして、約束の時間に遅れたりします。また、特定の数字を不吉だと感じて、あらゆる行為の際にその数字を徹底的に避けようとする場合も多いです。左右対称でないといけない、少しでも曲がっていると許せないなど物の配置などに強くこだわるケースも見受けられます。
物を貯め込んでしまう
使わないものもいずれ使うかもしれないという思いから捨てられなくなってしまいます。家の中には不要なもので埋め尽くされて、ゴミ屋敷になる可能性も出てきます。はたから見るとどう見てもゴミなのですが、本人にとってはまだ使う可能性のある必要なものという認識が残っています。捨てようとするとゴミじゃない!と怒られるケースなどもあります。
他者を巻き込んで、強迫行為を強要する場合も
汚いというような強迫観念や強迫行為を相手にも強要する場合も出てきます。徹底的な掃除を相手に申し付けたり、確認を何度もするように指示したり、安心できるまでその行為を強要することなどから、問題になります。また、その強迫行為が実行できないとイライラして家族や身近な人に当たってしまうこともあります。そういった面からも治療が必要になる病気です。
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